« 吾妻ひでおの「失踪日記」を読む | Main | 佐原真の「戦争の考古学」を読む »

April 12, 2005

「軍事組織とジェンダー」を読む

▼午前中お伺いした家には松本俊介のポスターが貼ってあった。松本の事はNHK新日曜美術館で知ったのだが、その番組で下駄を履いた青年がすっくと立っている絵が印象に残っていた。それと同じものだったので、すぐ分かったのだが、その方は松本の作品がお好きで、わざわざ展覧会が来たときに見に行ったと言う話だった。
▼「ERⅩ」を3話ためてしまったので、一気に見た。9話の最終回にも出てきた「キンシャサ」とはどこかと思ってインターネットで検索したら、コンゴの首都であることがわかった。キンシャサでおもしろいサイトが出てきたので、ご覧頂きたい。人工衛星から撮影した、各地の様子だ。しかしカーターがコンゴの行く飛行機や、現地をジープで移動するときiPotを聞いているのはおかしい。つまりあれは充電しなければ使えない。再生時間はたしか10時間程度ではなかったかと思う。現地では「電気がなくなるから無線機を切る」という話がでてくるくらいなのだから、iPotなど使える筈はないのだ。
▼昨夜の「ER」で腹部動脈瘤の場所を開腹手術でみつける手術は実に見事だった。あの興奮のあとああいうことになるのも、ごく自然の成り行きであろう。
▼「軍事組織とジェンダー/自衛隊の女性たち」佐藤文香著 慶應大学出版会 4000円。先週80年に作られた「プライベート・ベンジャミン」というアメリカ映画を見た。ゴールデン・ホーン演じる女性は最初の結婚は両親に反対されて離婚。二度目の結婚では新婚初夜に夫は「I'm coming…」と云って本当に「逝って」しまう。その悩みをラジオに投書したところ、それを聞いていた徴兵係官に言葉巧みに誘われて、「いつでも辞められる」と入隊してしごかれる羽目になる。そして配属先は女性初の空挺部隊である。おそらくアメリカでも女性の入隊が認められた頃に作られたと思われる、コメディ映画なのだがしごきが男性と同じ(その点では「GIジェーン」もまったく同じだ)というだけで単なる珍しい存在のPRにしかなっていない。本書は慶應大学院のメディア研究科で博士号を取った女性の研究結果である。では自衛隊は米軍と女性採用について何か違うところがあるのか?というのが一つのテーマである。それは年代ごとに作られた自衛官募集のポスターに顕著に表れている。80年代までは国を守るのは男で、女・子どもは従という存在になっている。ところが89年から女性自衛官だけのものに変化する。それは男性自衛官なかなか「集まらない」という社会現象の逆のでもあるが、女性言葉「好き」の3連発ポスターまで登場する。著者によればそれは「自衛隊組織内で、維持しようとしているジェンダー秩序とは、女性が応援し、男性が応援されるという非対称的な関係に基づくジェンダー秩序であると考えられる」と断言する。95年くらいになると戦闘服で微笑む自衛官の図となるが、自衛官でありつつも、なお「女らしい」女性自衛官が求められいる。
▼同じような例はのは米軍のパンフレットにもあり、迷彩ヘルメットの下で微笑む女性の写真のキャプションは「最良の兵士の中には口紅をつけている者もいます」という。つまり日本の自衛隊でもポスターを分析すると軍事組織における女性としては、そのような女性が主流であることが適切なのであると云っていることと同じなのだ。著者はその後防衛大学在学中の女性自衛官に、防衛大学の許可と、本人の同意を得て匿名のインタビューを試みる。そこで女性たちは「小手調べのつもり」で受験したら受かってしまった。大学にに入ってからも試験の上位に来るのは常に女性であるという、「迷惑そう」に答える教官たちの証言もある。インタビューが防衛大学の女子学生だけだったのは残念だが、それでも彼女たちは、「本当に自衛隊は自分たちを長い間必要としてないない」と敏感に感じ取っている。
▼自衛隊創立当時からの流れを見れば、初期の軍事色の濃いイメージを、女性隊員のポスターをつくり採用することで、非軍事的で明るく親しみやすく身近なイメージへ「男らしい」男性のみによって担われる組織を、男女がともに働く職場、平和創造者としてのイメージへ変えることに力を注いできた。それは婦人自衛官教育隊の以下の文書で明かでである。
「自衛隊が国民のコンセンサスを得るためには『戦技』のみの『無秩序』な『動物的』集団であっては、頼もしさであるはずのものが恐怖と疑念にとって変わることになってしまう。これらを防ぐためにも自衛官(女性)の有効活用を『利口に』かつ『民』をリードする心意気で検討していく必要がある。」

|

« 吾妻ひでおの「失踪日記」を読む | Main | 佐原真の「戦争の考古学」を読む »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「軍事組織とジェンダー」を読む:

« 吾妻ひでおの「失踪日記」を読む | Main | 佐原真の「戦争の考古学」を読む »