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June 24, 2005

鳥尾敏雄の「死の棘」を読む

▼ここ数日蒸し暑い日が続くせいか、身体がだるい。ならば飲まなければ良いのかと思って2日飲まなかったが、それほど顕著な変化はなかった。7月15日の飲み会で「浴衣の着用」と書いたら、「古いものしかない」とおっしゃる方がいて、何度もメールをやり取りしていくうちに、最終的に「ビキニの水着」ということになった。これはわたしが希望したのではなく、先方からそうおっしゃったのである。
▼サマワの自衛隊高機動車が襲撃された。インターネットの原発の機密密情報が流れたとか言って大騒ぎしている。前者でいえば自衛隊車両がイラクにいて、対米協力をしていることが問題にされない。後者では原発に「機密がある」ことが問題にされないのは何故か?そしてパソコンが悪いことになる。アメリカのカード情報流出にしても、その管理体制が問題にされず、インターネットは怖いという話になってしまう。兄弟喧嘩で弟が兄を文化包丁で刺し殺した事件だが、こいう事件は多発しているにもかかわらず、「文化包丁禁止令」は中々できない。
▼土曜日の朝日別刷り「be」に伊藤千尋記者が「愛の旅人」「寅さんとリリー」としてに出演した「リリーの軌跡」を追っていたが読ませた。昨日は折しも沖縄の日本軍による組織的抵抗が終わった日という事で、あちこちの新聞が1面下のコラム欄でこのことを書いていたが、記者の筆力がもろに出てくる。「エレニの旅」で夫からの手紙を読んでいる中で「沖縄戦に参加することになる」事を書いた新聞もあったが、せっかく良いテーマなのに勉強不足で突っ込みがたりない。その点日経の「春秋」は「ベルリン陥落1945」(邦訳、白水社)で「侵略への復讐に燃えたソ連軍が、敵国ドイツ国内に進撃して、首都を落とすまでの…」で始まるが、読む物をその場に置き換えるような、場面展開である。「エレニ」で引っ張った人は、小説をあまり読まない人らしく、結論がこの新聞に見られるように短絡的で深みがない。
▼朝日で伊藤千尋記者は奄美大島加計呂麻島呑之浦にベニヤ板でできたボートに爆弾を積んだ特攻艇「震洋」の基地があった事を書く。この小説を書いているのは鳥尾敏雄だ。夕方さっそくインターネットで在庫を確認した上で図書館へ行った。それは新日本文学全集に入っている。収納してある場所が分からなかったので整理番号「31-544283」というとNAMさんに背格好がそっくりの女性が、親切にその場所まで案内してくれて探し出してくれた。伊藤の記事によれば「死の棘」という作品なのだそうだが、所蔵されていた鳥尾の5作品を読んで概要が分かってきた。鳥尾は現地で海軍中尉をして150人ほどの特攻隊員を率いていた。ところがふとしたことから、となり村の少女Nと相思相愛の仲になってしまう。少女は彼と逢うために険しい海岸づたいの道を夜中に5kmも歩いてやって来る。近道をするためには満潮のとき海没してしまう洞窟を通ることさえいとわない。またここはハブが出る危険もある。中尉も夜中に彼女と逢うために脱出するのだが、兵士たちは見て見ぬふりをしている。そして8月13日夜、全員に出撃命令が出る。中尉は少女に海軍士官だけが持つ事を許されている短剣を渡す。少女には「これは演習だ」と言って安心させるのだが、少女は死に装束に身を包んで、喉を突き刺して死ぬために海岸に正座して見送る準備をする。
▼結局2日待たされたが、「敗戦」になって出撃命令は撤回される。ここからが「死の棘」の描写になる。愛し合った二人は戦後結婚し、二人の子どもをもうける。ところが夫に愛人がいることがわかり、彼女は狂乱してしまう。どうみても神経症としか思えないのだが、愛人との関係を追求する妻は、特高の拷問のようだ。まわりを囲って逃げ道を塞ぎネズミを追い込む猫のように執拗である。むかしこれに似た友人がいたが、こういう終わりのない追求をされたらたまらないなーと思う。最終的には子どもたちも巻き込んだ「カテイノジジョウ」と称する、追求劇と広がっていく。いかに深く愛し合っていても、一つ歯車が狂ってしまうと、家庭が警察の取調室のようになってしまうのだ。「長谷川四郎集/鳥尾敏雄集」新日本文学全集28巻 集英社 380円
▼『鍵盤乱麻』Web上に七夕の短冊を作ります。場所は現在開店休業中の「携帯短歌欄」です。みなさんの願いごとを、一筆お寄せ下さい。

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