« ◇「ミュンヘン」レイトショーを見る | Main | ◇「アメリカ、家族のいる風景」を見る »

March 18, 2006

◇「送還日記」を見る。

▼昨日はかなり多くの方がアクセスしてくださった。おそらく「きっこの日記」のこととその関連リンクをご紹介したからだろう。このくらいアクセス数があると、書いている方も元気が出てくる。わたしは「きっこ」の筆者の詮索などはしない。しかしあの執筆分量と情報収集力は複数、おそらく5人程度のジャーナリストの協力しあって書いているものだと想像している。昨日夜のHP研究会もこの「きっこの日記」と自民党のブログ研究会の話になった。
▼先日某読者がわたしのことを「テンサウザント・ジャーニー」だと書いてくださった。どうもカタカタでは何のことやら見当がつかないので辞書を引いてみた。おそらく「ten thousand journey」=「一万円の旅」の達人ということを言いたかったのだろう。1万円旅をくり返して、あと7年くらいで日本一周を完成したいと思っている。もちろん本州関西、中国地方以外1万円で行ける可能性は少ないが、夜行バスとか方法は色々考えられるのでご期待いただきたいのである。カネがないぶん頭と体力勝負で回りきるのだ。
▼◇「送還日記」朝鮮戦争の時、北朝鮮兵士たちは正式にはジュネーブ協定で軍事捕虜としてすぐ北に送り返されなければならなかった。しかし両国がその法律を批准していなかったかどうか不明確であるが、軍事裁判を受けさせられて、非転向北工作員という判決を受けて韓国の牢獄につながれる。長い人はギネスブックに載ったという45年という長きにわたる人もいる。その中には兵士として北から来た人だけではなく、南にいて北に転向した人も含まれている。92年南北緩和政策が始まり当時の金大中大統領が平壌を訪問して「非転向北工作員」は釈放されることになる。たかだか一兵士だったというだけで死刑囚の「無期」よりも長い間投獄されること自体考えられないことだ。出獄した人々を「迎える会」の村人は暖かく迎え入れようとしてハイキングや様々な行事に引っ張り出す。「非転向」の人たちは大体70歳以上になっている。そういう行事に引っ張り出されても、MINさんが酔って歌う「将軍様を讃える歌」くらいしか歌えないのでみんな白けてしまう。
▼この映画の若いキム・ドンウォン監督は自分の住む町にやってきて生活を始めて「非転向工作員」を13年前から撮影する事を考えた。出獄しても母国は迎え入れてくれる気配はないので自活しなければならない。そして多くの肉親は出獄した彼等に会おうともしないし、まだ生きている母親にも合わせようともしないし、極端な場合は墓を隠して墓参さえさせない。それはこの映画だけ見ていても分からないが、例えば「ブラザーフッド」などを見ると朝鮮戦争というのは兄弟、肉親も北と南に別れて憎しみあるいは、スパイの汚名を着せられて密告、殺し合った歴史があるからだ。監督は時間をかけ5年くらいして、「元政治犯」たちと心を開き会話と撮影に同行することに成功する。「元政治犯」たちは自活の方法として薬草を作ったり、針灸の技術を現実の生計の役に立てようとする。しかしそれだけでは無理で、現実には清掃に始まりゴミ拾いをしながら生き続ける。そしてついに「送還」のがやって来る。20余台のバスに分乗して板門店から北に入る彼等。
▼やがて届いたビデオには「いかに豊かな暮らしをしているか」という政治プロパガンダだった。そこに彼等は気恥ずかしそうに、かつ誇らしく歩いている姿が映っていた。1年後南の支援者に対して「招待状」と航空券のチケットが届く。だが監督だけは何故か飛び立つ1日前に北から「拒否」の通告が来る。やむを得ず友人にビデオカメラを渡し、空港で自分の姿とメッセージを写して託す。撮影後戻ってきたビデオには、一糸乱れぬマスゲームや、少年少女の合唱団が将軍様を讃えて歌う姿、それに幸せそうにバスで移動する「非転向工作員」の姿だった。しかしこの牢獄で自分の信念を貫いて非転向で戦ったイデオロギーとは、命をかけてまで守るべきものだったのか自分自身を問われることになるのだろう。朝鮮戦争の歴史と傷跡に迫った渾身のドキュメンタリー。監督が長い時間をかけて非転向工作員とされた彼らと、実際ハイキングに参加し、作業を手伝い、帰還の様々な運動を一緒にするなかで信頼を築き上げることに力を入れる。その誠実で真面目なキム・ドンウォン監督の姿勢は撮影という技術力を遙かに超えた映像は、胸に迫ってくる。渋谷シネアミューズ3月24日まで。

|

« ◇「ミュンヘン」レイトショーを見る | Main | ◇「アメリカ、家族のいる風景」を見る »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« ◇「ミュンヘン」レイトショーを見る | Main | ◇「アメリカ、家族のいる風景」を見る »