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February 19, 2007

◇「善き人のためのソナタ」を見る

▼◇「善き人のためのソナタ」DDR(旧東ドイツ)は監視国家であった事で知られている。人口1700万人であったが、国家保安省(シタージ)は10万人で、その協力者である手先は20万人いた。昨年もご紹介したが友人F氏は子息とともにその痕跡を探るべく、旧東独を旅した。そしてライプツィヒのシタージの資料保管庫を訪ねた話をお聞きした。まさにその場面が最後に方に出てくる。
▼シタージのヴィースラー大尉は上部の命令で、劇作家のドライマンと舞台俳優で女優クリスタを監視するように命じられる。二人が外出中たった20分の時間をつかって室内に隠しマイクを張り巡らせる。たまたま見ていた隣人に「喋ったら娘を学校から退学させる」と脅してくる。監視は2交代で大尉の部下である軍曹と交代で行われている。しかしヴィースラーは監視を続けているうちに、二人の方がまともではないかと思えてくる。そしてマイクを仕掛けたとき、ブレヒトを一冊押収してきてそれを読みふける。劇作家が反体制派である証拠を掴めば、出世間違いなしなのだが、気持ちは次第に揺らいでいく。そしてあるとき東独の自殺者の統計から見えてくるもの、という論文を西のシュピーゲル誌に発表しようとする。
▼投稿するにはタイプライターが必要だ。文章を書く仕事をしている人は東独では全部登録制になっている。彼らはオリベッティに超小型タイプライターを手に入れ、タイプを打ったあとは床下に隠しておく。ドライマンの愛人の女優はとても魅力的であるので、保安省の大臣の目にとまり、大臣の送迎車の中で暴行を働く。そして「愛人になるよう」圧力をかける。だが憤慨した大尉は彼女を救ってやり、その事実を反大臣派に有力な証拠として握る。そしてシュピーゲルに発表された論文でシュタージ本部は大あわてになり、逆スパイからタイプの種類を特定する。そして隠してある場所を女優を薬物濫用の疑いで逮捕する。そしてドライマンに疑いをかけた上官の中佐が「最後のチャンスだ」と尋問させる。
▼女優は口を割るが手入れの際自分自身を見失って交通事故に会う。そしてシュタージの大尉はすばやくタイプライターを隠してしまう。上官である中佐からは「お前はこれから20年地下室で封書の検閲係をする事になる」と脅す。しかし4年半その仕事をしていたときベルリンの壁は崩壊する。大尉は郵便配達夫になり、ドライマンは元中佐に「なぜボクは監視されていなかったのだろう」と聞きただすと「君は完全監視下にあったんだよ。疑問に思うなら自宅のコンセントを調べてみろ」といわれ、その通りだったので驚愕する。情報公開法をたてにシタージの保管庫に行って資料を出してもらうと50冊くらいのファイルがでて、日常生活から愛人とのセックスの様子まできめ細かく記載されている。そこに不思議なコード名が書かれている。調べると盗聴していたヴィースラーの事だった。もうこれは「みえない雲」よりも優れた、今年のベスト3に入るであろうドイツ映画だ。
▼ドライマンはそれを元に新しい戯曲を10年後執筆する。タイトルは「善き人のためのソナタ」とある。そして献辞に「コード名○○○に献呈する」と書いてあり、ヴィースラーもそっと一冊買い求める。人間にまともな倫理観が残っている限り、汚れのない心をもつ人々の行いは、敵の心も動かすのだ。渋谷シネマライズのみ。明日は「チョムスキーとメディア」を書く。3時間余の大作でありました。

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