« ◇「かもめ食堂」を見る | Main | ◇「ハゲタカ」最終回を見る »

March 26, 2007

◇「ブラック・ブック」を見る

▼朝9時前からアクセスして下さる方にはありがたいが、わたしは様々な家事や仕事を終えてからでないでパソコンに向かうことはできない。書くという行いはただ読むのと違い、かなりエネルギーを集中して使うのである。その点ご了解いただきたい。
▼◇「ブラック・ブック」先日「カサブランカ」のクラブでドイツ兵が唄う曲のご質問をいただいたが、あれと同じ「ラインの護り」がこの映画の前半で歌われている。ドイツ語なので英訳だけでも出して欲しかったが、それはなかった。
▼ナチス占領下のオランダ、アンネのように屋根裏に小さな子どもたちを隠れて暮らすユダヤ人ラヘルがいる。たまたま爆撃帰りのユンカースが弾倉を空にして爆弾を投下したものが、隠れ家全体を爆破してしまう。行き先の失ったラヘルは、ユダヤ人の海外逃亡を手助けしている老弁護士を頼って、父の預けた宝石を現金を受け取って、海外へ行くための小さな貨物船に乗る。そこで両親や弟と再会するが、その行動はナチスにばれていて皆殺しにされる。ラヘルは川に飛びこんで九死に一生を得る。それからレジスタンスの人たちに助けられ、エリスと名前を変えて行動を共にするようになる。
▼レジスタンスの目的は、ナチスにとらえられている味方を救出し、かつ彼らに武力闘争を挑むことになる。困難な闘いが続く中、ラヘルは特殊な任務を与えられる。それは武器を運ぶ列車の中で偶然一緒になったナチスの情報将校に接触する事だった。「そのためにナチスと寝ることができるか?」という決断を迫られる。幹部の部屋にあったヒムラーの似顔絵の裏に盗聴器を付ける任務に関わる。それを手がかりに仲間の救出を試みようとするのだが、盗聴器の存在は彼らにバレていて、逆に救出に向かったレジスタンスは一網打尽にされる。そして2週間後ベルリンは解放されるが、レジスタンスと取引をしたという理由で、情報将校は「戦前の銃殺刑の判決は有効だ」と、処刑されてしまう。そして解放後ラヘルはナチスの協力者だったとして収容所に入れられ、二重スパイだったという濡れ衣で屈辱を味わう。
▼彼女を救出したのは、レジスタンスの生き残りの医師だった。しかし彼からも、二重スパイだったと決めつけられ、密かに事故を装って殺すためインシュリンを注射される。二転三転、最後に四転するエンターテイメントだ。現実にあった話と、想像を組み合わせているが、最後は「シンドラーのリスト」のラストと同じく、「イスラエルは永遠である」というテーマになっている。
▼なぜヨーロッパではレジスタンスが生まれ、日本では生まれなかったか?それは丸山眞男の分析に任せるとして、わたしは彼の分析を全面的に支持しているわけでもない。かといって拷問に耐えて牢獄に入っていただけで、「戦争に抵抗した」と自慢できるものでもないと思う。わたしの考えでは日本は元寇以来日本本土を外敵に侵略されたことはない。だから国民が一致して外敵に抵抗したという実績もない。「パリは燃えているか?」にしても、この「ブラック・ブック」にしてもレジスタンスは、右派から容共派、過激派、それに共産党まで一緒にレジスタンスに参加している。もちろん一枚岩でないからミスも多々起こるし、意見の不一致も起こる。それらを含めて祖国を愛することとは何かというテーマを突きつけられる。しかし人間だから、どうしても自己の利益だけが優先してしまうため、この映画のようなストーリーが生まれるのだろう。140分の作品だが、二転三転くらいにしておけばよかったのに…。と悔やまれる。「ブラック・ブック」とは、レジスタンス側のナチスの協力者の名前が書かれていたとされる手帳である。
▼明日はは「ハゲタカ」最終回について書く予定だ。

|

« ◇「かもめ食堂」を見る | Main | ◇「ハゲタカ」最終回を見る »