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April 14, 2007

◇「パフューム」と「カンボジア(9)」

PpshPPShを持つ
▼地雷ミュージアムから戦争ミュージアムに向かう。地図で言うとホテルの近くである。合理的に回るには最初にこちらに回って方が良いと思うが、ガイド氏は融通を利かせることはなく、あくまでもこちらの言った順番である。それは3ヘクタールほどのマンゴー畑と共存していた。入り口で3ドルを支払う。もっとまともなものを見ることが出来るかと期待していたら、スコールで展示物はすべて錆びて赤茶けていたが、個人マニアのコレクションだから仕方ない。そこには榴弾砲から始まって対空機関銃、それにカチューシャ砲(スターリンオルガン)まであった。もちろん昨年ホーチミン市で出会ったT54戦車もあったし、飛行機では朝鮮戦争で使われた様な大昔のミグ19、それにランボー4「怒りのアフガン」に出てきたような旧ソ連のミルMiー8もあったのにはいささか驚いた。
▼そしておなじみ銃器コーナーには日本のモデルガンではないかと思えるような小振りで機関部が動かない錆び付いた銃器が展示してあった。トミーガンが実物より遙かに小さいこと。AK47の銃剣には、不思議な事にSKSライフルの折り畳み式で細見の銃剣がそれが取り付けられていた。そして他では見ることが出来なかったPPSh41マシンガンがあった事だ。これは通称マンドリンと言われてソ連が日本が占領している満州に押し寄せた時活躍した機関銃だ。
▼まあいずれにしても、みんな錆び付いていてがっかりした。この一角には矮鶏が数匹いた。カンボジアのスポーツは何ですかとガイド氏に聞いたら、キックボクシングと闘鶏だという。闘鶏など日本では博打と同じだと思うが、もの凄い人気なのだそうだ。昨年カンボジアに来た人に聞いたら、カンボジアにには「音楽」という授業科目がないということだったが、これも意外だ。その数匹の矮鶏の脇に猫が一匹いた。わたしはどんな猫とも会話できる特技を持っている。しかしカンボジア語は通じなかったと見え、何度声をかけても心を開くことなく、逃げ去ってしまった。
▼もう一つ驚いた事はカンボジアでは、ただの一人も銃器を持っている人に会うことはなかった。交通パトロールも観光専門のツーリストポリスもそうだった。それだけ治安が安定しているという反映でもあるのかと感心した。
▼◇「パフューム、ある人殺しの物語」フランスでなぜこのように香水が発達したのか?おそらくそれはベルサイユ宮殿でさえトイレがなかったという不衛生が蔓延していたからかも知れない。そして映画に登場するのは18世紀になったばかりの市場だ。ここには腐った魚や、切り刻まれた動物の肉が散乱している。その魚を売る女が一人の男の子を産み落とし、育てる自信がない彼女は逃亡してしまう。赤ん坊の泣き声に気づいた市場の人々は彼を孤児院に届ける。虐められながら成長するグルヌイユは、皮鞣し職人の家へと売られていく。時折汚い市場の付近を行列して通り過ぎる貴族の娘たちは香しい匂いを振りまいていく。
▼グルヌイユはその匂いの虜になっていく。ある時毛皮の配達をしているとき、前を歩いていたパーム売りの赤毛の少女の匂いに引かれて後を追いかける。驚いて振り向いたとき、声を立てないようにと口を塞いだ力が大きかったので、彼女を窒息しさせてしまい、それが病みつきになる。毛皮の配達途中香水職人の店に興味を持っている事を知られ、高いカネで彼は売られていく。その調香師バルディーニはもはや峠を越して客はあまり寄りつかなくなっている。ところがグルヌイユは高価な香水を計量器を使わず匂いの感覚だけで再現したためバルティーニは驚愕して、彼にすべてを任せるようになる。それとともに、店は大繁盛し始めるが店主は死んでしまう。
▼グルヌイユは脂肪に香りを移す方法に成功する。ただしその材料になる脂は美しく若い女性のものでなければならないため、彼は次々殺人を犯すことになる。あるときその標的はグラースの大金持ちの一人娘に絞られる。父は誰かに娘が狙われていると気づき、離れ小島にある僧院に預けようとするのだが、彼の魔手にかかってしまう。香水店から女性たちの髪の毛や着衣が発見され、グルヌイユは極刑にされることになる。それは鉄の棒で叩かれ、さらに十字架に磔になることだった。刑場に引き出されたグルヌイユは持っている最大の美しい天使のような格好をしていた。公開刑場には多くの一般市民から裁判長、それにいかめしい格好をした法皇、さらに娘を殺された大金持ちも、刑の執行はまだかまだかと待っていた。しかしグルヌイユの天使のような姿を見ると、みんな一斉にひれ伏してしまう。そして自作の香水を持っていたハンカチに付けて振りまくとどよめきさえ起こる。
▼時の権力者によってもたされた、「権威」はいかに脆いか。そしてまた見せかけの美しさや匂いもいかに人々を惑わせるか。思わず身震いをするほどの力作だった。

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