◇「オール・ザ・キングスメン」を見る
▼◇「オール・ザ・キングスメン」人が権力を握るとその居心地の良さにいかに腐敗して行くか描かれた作品だ。1949年のルイジアナ州、新聞記者のジャック(ジュード・ロウ)が執政官であるウィリー(ショーン・ペン)と出会う。それはウィリーが郡で起きている汚職の摘発を一生懸命にやろうとしていたときだった。ウィリーは職を辞めて州知事に立候補しようとする。だが無名の彼の人気は全くない。ある時スタッフが書いた原稿を読むのを止めて、裕福な金持ちの政治から貧乏人が病気になっても心配ないような病院を作る。富める人を有利な政治でなく、貧乏人に冨を回すように訴えると聴衆が次第に集まってくる。彼はこれこそ選挙のコツだと確かな手応えを感じる。
▼一方新聞記者のジャックは社の方針とは違うウィリーの活躍を執筆している。上司にそれを咎められると、「辞める」と思い切って退社してしまう。するとウィリーは彼を自分の参謀として雇用する。それからジャックはウィリーのイメージアップの記事を書いたり、人脈を最大限に利用しようとする。ある時はジャックの親友の父が医者であったのを利用して、病院を建設するための世論作りをする。ある時はジャックの幼なじみの女性を口説くなどだ。そして歴代のアメリカ大統領同様女ぐせの悪さも目立ってくる。弱者のための病院は建設するが、病院に集まってくる資金は知事に環流する仕組みが出来ている。
▼次第にウィリーの周りには利権の匂いを嗅ぎつけた怪しい連中が集まってくる。気になるのは郡の高等裁判所の判事が、知事を訴追しようとしている事だけだ。またまたウィリーは判事と親しかった事を知り、圧力をかけたり、昔の悪行や失敗を探すように命じる。しかし清廉潔白な判事からは、昔の傷は何一つ出てこない。ジャックが最後に判事に会うと、「君は僕を傷つけたが、僕は君を傷つけるような事を知っているが絶対言わない」と言って、その晩自殺してしまう。実は判事は彼の父親だった事を知り愕然とする。そして議会では17対21で、知事は訴追されない事が決まる。しかし病院の院長となった彼の幼なじみは、知事の不正を知り、「議会で訴追を逃れても自分は許さない」とウィリーを銃で撃つ。
▼権力を握ったものは決してその地位を自ら離すことはない。なぜなら彼だけでなく、取り巻きたちもまた、彼のお陰で喰っていく事ができるからだ。権力を握るものはみな腐敗の道を歩み事をこの映画は教えてくれる。
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