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July 26, 2007

新藤兼人は今も25歳の青年

▼昨晩NHKの「クローズアップ現代」で映画監督の新藤兼人が登場していた。わたしが見たのはBS夜9時半の再放送の方だ。これは週末に渋谷ユーロスペースで公開が予定されている「陸に上がった軍艦」の宣伝も兼ねており、今監督がなぜこの映画を作ろうという気持ちになったか語っていた。新藤は現在95歳で一人住まいである。時々孫の風(かぜ、30歳くらいに見えた)さんが食事を作るため通ってきている。だが頭脳は明晰で夜になるとTVを見てシナリオを作る努力を怠らない。それに新しい事に挑戦しなければいけないと、通ってくる親戚の人に頼んで英語の勉強も怠らないのである。
▼そして鉛筆を削って原稿用紙のマス目を埋めていく。「陸に上がった軍艦」のシナリオは10年ほど前に完成していた。ところが予算を計上すると1億円はかかるというので、見送りになっていた。しかしどうしても作りたいという気持ちが捨てきれず、シナリオを予算がかからない回想形式に変更する。そして自らも語り部として登場するように書き換えた。良く知られているのが木造戦車に地雷を持って飛びこむシーンである。わたしは今年の1月に、この木造戦車の撮影風景の写真を目にして驚いた。日本の戦車にしては格好良すぎるが、新藤の記憶を便りに絵を描き、それを元に作ったらしい。木造だから当然動かない。両脇にロープを付けて20人ほどの兵士が引っ張る。そして体当たりをする兵士も木の板を地雷に見立ててキャタピラーの間に投げ込むというものだ。
▼果たしてこんな訓練をして実際に役立つかどうか?おそらく役に立つまい。新藤は「戦争は指揮官の命令で動かなければ成り立たないから、個を破壊する事をまずやる」と語る。これは今の自衛隊だけではなく、全世界の軍隊の訓練風景を見ていると同じ、「個を捨てる訓練」が基本になっている。「持てる力を敵の弱い一ヶ所に集中させる」というのが戦争の基本だからそうなる。新藤は位が上の人が書いた小説や映画はあるが、二等兵が見た戦記というものが今までなかったので、映画化したというが貴重な作品となるだろう。さらに新藤は「今でも自分は無限の可能性のある25歳の青年だと思いたい」と語っていたが、見習いたいものだ。部屋には15年ほど前に亡くなった妻、音羽信子の遺影が新藤を見つめていた。

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