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November 23, 2007

◇「カルラのリスト」を見る

▼わたしの知人の学者に地上の楽園を追い求めている人がいる。20年ほど前は「ユーゴスラビアは理想の国で地上の楽園だ」と豪語して雑誌に論文も書いていた。その国が消滅すると「今度はコスタリカが理想の国だ」と言い出して生徒を引率してかの国まで出かけてきた。そのコスタリカも近頃はイラクへ出兵することを決めた。さてユーゴスラビアとはチトーが非同盟を標榜してリーダーシップとってきた。しかし実体はアメとムチで価値観の違ういくつかの国をまとめて、資源を再分配する方式で、「国」としてやってきたが、チトーが死亡した後は雲散霧消してしまった。そして起きたのは内戦である。
▼◇「カルラのリスト」オランダのハーグにある旧ユーゴの国際刑事法廷(ICTY)で検察官として辣腕を振るうのはスイス国籍のフランス語(見ていると数カ国語を話している)を話すカルラ・デル・ポンテである。彼女の仕事は旧ユーゴでは1995年のスレプレニツァの虐殺(ボスニア内戦においてセルビア人勢力によるムスリム人数万人の虐殺事件)の張本人を逮捕することだ。指名手配書には10人ほどの顔写真が出ているが、その中でもカラジッチとムラディッチには500万ドル(6億円)の懸賞金がかけられている。被害者で身元が分かったのはようやく6000人ほどだ。他の人たちはどうなってしまったのか行方はようとして知れない。夫、妻を始め小さな息子たちを殺害あるいかレイプされた人々の悲しみは、嘆き泣いても忘れ去ることは出来ない。
▼カルラは常に5人ほどのスタッフを引き連れ作戦を立て、そして各国をスイス軍の小型ジェット機で飛び回る。セルビアでは首相に何度も会って、「本気で犯人を捕まえる気持ちがあるのか」と強く迫る。首相が本気でなければEUの理事会で、その事実をありのままに報告する。そうすればクロアチアのEU加入が遅れるだけだ。カルラの行く国々で飛行機を降り立つを武装した護衛が周りを警備して5台くらいのパトカーや装甲車両がコンボイを組んで移動する。そしてマスメディアに情報を小出しにして、相手側政府に圧力を掛けるという手段も使う。
▼それどころか、国際刑事裁判所(ICC)に加盟していないアメリカのワシントンまで出かけ下院議員とロビー活動をしたり、ライス国防長官と会おうとする。「正義が勝たなければ、家族を殺害された人たちはどうなるのだ」と言い切って自らの信念を貫く。裏取引はしない、正々堂々と法の下の正義で戦争犯罪を犯した者達を裁くのがカルラの目的だ。記者に「今まで怖かったことは?」と聞かれるが、きっぱりと「一度もなかった」と答える。彼女のバッグはルイヴィトンのかなり新しいデザインのもの。ライターはカルチェのゴールだった。60才は過ぎていると思われるカルラは疲れる事を知らないのかと思うほどエネルギッシュである。彼女の任期は07年9月までだった。それまでにやれることは全部やり遂げなければならない。武力の支配する世界から法の支配する国際社会にするために。11月30日まで恵比寿東京写真美術館で。

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