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October 13, 2008

◇「フツーの仕事がしたい」を見る

▼休日にもかかわらず大勢のみなさんにアクセスしていただきありがたい。わたしは土日の更新はあまり時間にとらわれないでやっている。来週は土曜日も取材が入っているので、この3連休は毎日映画館に通っていた。今朝も見ておかないと来週のシネマの〆切りに間に合わないので、数を稼ぐのだ。昨日は東中野ポレポレに行った。映画は13時からでチケットを買って座席を確保してから食事をしようとした。この映画館はこの前が「あめりかバンザイ」で、その前2年前になる「三池」だったような気がする。そのとき鵜の目さんとMINさんの3人で食事した所が良かったので探したが倒産していた。時間は迫ってくるので仕方なく駅の脇にある立ち食い蕎麦に入って、ミニカレーセットという蕎麦とミニカレーがセットになったものを食した。これは480円だったが、お世辞にも美味しいとは云えないシロモノだった。
◇「フツーの仕事がしたい」36歳の皆倉信和さんは車大好き人間で高校卒業とともにドライバーの仕事を始めた。最初の場面はトラックの運転席で友だちとアマチュア無線を通じて冗談を言い合って仕事に励む様子が出てくる。皆倉さんの今の仕事は生コンを輸送する仕事をしている。会社は江戸川あたりにあるが、3次下請けである。前はひと月30万円を超える時もあったが会社の一方的な都合で手取りは20万円に近づいてしまっている。しかも建設現場は24時間体制で仕事をしているので、生コンもそれに合わせて運ばなければならない。納品と作業月報を見ると午前2時とか3時に出勤して帰宅するのは午前0時という状態がひと月も続いている。しかも歩合率は一方的に引き下げられた。有給休暇もゼロ、社会保険、雇用保険の加入もなかった。
▼皆倉さんはあるとき全日本建設運輸連帯労働組合のチラシを貰って取っておいた事を思い出し、組合事務所を訪ね一人でも加入出来ることを知り、すぐ加入する。どこでもそうだが、組合は経営に存在を知られると弾圧され、その結果潰される。皆倉さんの場合もどうしても会社と交渉する必要が出来たとき公然化する。ところが会社は労務担当を伴って全日本建設運輸連帯労働組合を訪問し、脱退届けを出させる。会社の役員は「普通こういうのは一人で来るんですが」と仕方なくそれを受理する。ところが翌日会社は皆倉さんにクビを通告してくる。悩んだ皆倉さんはもう一度組合に相談し、復帰することになる。皆倉さんはいかにも人の良さそうな、気が弱そうに見える青年である。それからが会社は労働組合に乗り込んで来たり、皆倉さんのお母さんが心労でなくなると葬式の場所にまで乗り込んで来て、皆倉さんや労働組合に対して嫌がらせをする。労務担当の取り巻きはスーツを着ているがいかにも暴力団関係者という風情である。葬式の現場で労働組合役員につかみかかったり、皆倉さんに脱退を強要する場面やカメラにつかみかかる様子は逐一ビデオに撮られていたので、それが証拠物件となり労務担当らは警察に暴力行為で告訴されることになる。
▼そうしているうちに皆倉さん本人が病気で倒れ緊急入院するはめになる。労働組合の闘いは二次下請けと親会社である大阪の住友セメント本社に向けられる。二次下請けへの抗議で分かったことは積載量は親会社ですべてコントロールしているということだった。つまり積載量オーバーは本社の指示で行っている。だから自動的にミキサー車に流し込まれるドライバーもそれが拒否できない。ついに組合は大阪本社を包囲する。そして本社通路の反対側に10畳ほどの巨大なビール製のスクリーンを組み立てて、「殺すな」、「殺すな」、「殺すな」という大きなプラカードを大勢で掲げる。そしていままで撮影した三次下請けの暴力行為をプロジェクターで映し出すのだ。会社側もこれには驚いて窓越しに恐る恐るのぞき見している。組合は「こそこそ見ないで表に出てきてみろ」となおも抗議活動をする。
▼入院していた皆倉さんはクローン病という難病と小腸に穴が開いていたのだが、3週間ほどで退院することができた。そして治療をしながらドライバーの仕事を始める。粘り強い組合の交渉の結果暴力行為をした3次下請け会社は廃業、ドライバーは新会社に全員雇用される。2次下請けの手配会社も違法積載はさせないと確約。住友セメントも法令を遵守する事で労働組合と確認書を取り交わす。そしてずっとビデオを回していたディレクターが独白する。「ぼくは映像制作会社を解雇になってその退職慰労金でこのビデオカメラを買って回している。最初皆倉さんは最後までがんばれるか心配だったけど、それは杞憂に終わった。むしろボクよりも凄かった」と語る。そして病気が安定してハンドルを握る皆倉さんは「一人だったら何もできずにクビにされていたけど、組合にはいっていたからこれまで出来た」と嬉しそうに語っている。
▼最近わたしはハリウッド映画で「これは真実の物語である」とか。「実話に基づいて創られた」という宣伝の映画は見ないことにしている。それはあまりにもつまらないから。だから最近もっぱらドキュメントに惹かれてしまう。とくに葬儀の場面で労務担当率いる暴力団員のような男が、皆倉さんの胸ぐらを掴んで脅す場面はどんな映画よりも迫力があって怖かった。それに社会進歩の闘いは何ものにも代え難い人間の尊厳を守る闘いだからね。
▼連日20時15分の回が終わった後はトークイベントがある。10月17日はアップリンクの浅井隆さん、22日は毎日新聞記者「貧困の現場」著者、24日は雨宮処凜さんなど。詳しくはポレポレHPをご覧下さい。

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