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December 04, 2008

睦沢町郷土資料館の「波の伊八展示」を見学する

 日光東照宮の「眠り猫」の彫刻を知らない人はまずいないだろう。そして葛飾北斎の「富岳三十六景」の一つ「神奈川おき、なみうら」もあまりにも有名である。これは昨年5月に作品が収められているという飯縄寺を取材した。しかしそのとき飯縄寺のJRのツアーとタイアップした、一般公開はすでに終わっていた。ここで見学できたのは初代伊八作による本堂の外部の山門の鷹と龍の彫刻とだったが、屋外のため色鮮やかという訳にはいかなかった。
 12月21日まで睦沢町の歴史民族資料館で、伊八の特別展示が行われているという。実物を目にすることができる希な機会なので、MINさんに同行をお願いして取材にむかった。なぜ伊八の彫刻を目にすることができるか、というと町内にある成就院の本堂が改築されるのだ。その期間寺との信頼関係を築いている資料館が、貴重な彫刻をお預かりし、目の高さで展示することが出来たのだ。町役場で場所を確認して、そこから車で10分ほどの資料館の責任者である文化係係長の久野一郎氏を訪ねた。
 成就院の本堂から外された伊八の彫刻は、2階の展示室の薄明かりの中に展示されていた。展示する位置を決めることから、照明まで久野係長自らが工夫されたのだという。伊八の事はJRのツアー以来関東一円でも知られるようになったという。それでこの睦沢村までわざわざ足を運ぶ方も多いらしい。
 ちょっと意地悪な質問だが、「伊八の行元寺にある作品が、北斎に影響を与えたという事は証明できるのですか?」とお聞きした。久野さんは「いや科学的に証明となると難しいが、現実の北斎はこの地にその頃やってきていますし、版画と絵はうり二つで、今風に言えばパクリ以外の何物でもありません」ときっぱりと断言する。行元寺の伊八と北斎の版画はこのサイトで比較できるのでご覧頂きたい。 成就院の彫刻は龍とその両脇に展示されている2点の波である。一般の見学客はカメラを使って撮影することは出来ないが、取材なので特別の許可をいただいて撮影したのがその写真の数々である。この彫刻は二代目武志伊八信常作の欄間彫刻「波に龍図」である。もちろん龍とは架空の動物であるが、その力強さには圧倒される。普段は欄間の高い位置に掲示されているので、この目線より低い位置から見ると様々な発見がある。爪の鋭さ、今にも食いつきそうな口、そして尾の太さである。この力強さは他の彫刻家の龍には見られない。
 見学に訪れた人も、龍の前の椅子に座ったままじっと見とれているという迫力だ。その一般見学客に、久野さんが教わったということが一つある。それは龍の目の位置である。眉の下に見える左目の位置と左右対称ではないという事だ。おそらく下から見上げる信徒などに両目が見えるようにと配慮して作られたのではないかという。
 そして両脇にある波はまるで腕か爪が空から降って来て海水を掴むような勢いがある。学芸員でもある久野さんはさかんに「いいでしょう。ねぇいいでしょ」と解説に力が入ってくる。この力強さは日光の東照宮では味わえないのです、とも言う。
 初代伊八は武志伊八郎信由(本名は武石伊八)と言われて1751(宝暦元)年に房州長狭郡打墨村(現在の鴨川市打墨)に生まれて1824年(文政7)年に没した。その間に南房総を中心に、神社や寺院の欄間などの彫刻ですぐれた作品を残している。伊八は息子の2代目から女婿など明治維新頃まで5代にわたって彫刻を続けていた。
 成就寺にある作品を彫った信常(本名武石万右衛門)は、1786(天明六)年生まれ、父信由のもとで修行し、初代亡き後38歳で武志伊八郎を継ぎ、藻原寺や清澄寺などに作品を残している。久野さんの推測によれば、かなり早くから父の仕事を手伝っていた。しかし自分の銘を父の生きていた時は刻むことができなかった。だから初代の作品と呼ばれるかなり多くの彫刻が信常の作である可能性が高いという事だった。
 なぜ伊八が凄いか?久野さんは言う。力強さと発想の豊かさで、西洋人にはこういう豊で奇想天外な彫刻の説明はできない。それは龍の両脇にある「波に宝珠二個図」と「波に宝珠3個図」でも分かるが空から波が降ってくるような構図である。そして波のまにまには宝珠が浮かんでいる。この生き物のような波が伊八の大きな特徴で、外房の荒海を現すかかのような、「波」の浮き彫りが独得の作風とされ、「波の伊八」の名を欲しいままにした。21日までの展示をぜひご覧頂きたい。交通の便はJR外房線上総一ノ宮から小湊バスで睦沢公民館下車徒歩5分、しかし交通の連絡が悪いので車で行った方が便利だ。電話0475-44-0290 無料
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