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January 31, 2009

◇「チェチェンへアレクサンドラの旅」を見る

▼東京は朝から大雨が降っていて、寒いです。トルコの大きな画像は会員向け特別サービスとしてデータベースに15枚ほど入れましたのでご覧下さい。メルマガ会員の方でパスワードを忘れた方はメールをいただければ個別にご連絡さしあげます。
▼トップページの左下に友人たちのリンクがある。その中に「医療・社会保障・福祉」を書いていらっしゃるHさんが、昨日トルコの絨毯屋さんのことをご紹介して下さった。それによるとエジプトの絨毯の販売方法とそっくりだったと言うことだった。たしか昨年行ったチュニジアでもほぼ同じ売り方だったが、トルコほど執拗ではなかった。
▼◇「チェチェンへ、アレクサンドラの旅」この映画は30日で終わってしまった。どうしても見なければならないと思って雨の中をユーロスペースまででかけた。渋谷はいつも和食のチェーン店にはいる。しかし時間になっても開く様子はない。ふとその反対側でいつも長ーーい行列ができている回転寿司の店が雨のせいかガラガラなので入ってみることにした。海鮮丼が何と500円で鯛の吸物が付いていた。吸物を一口啜って和風総本家ではないが、「やっぱり日本って良いなー」と思う瞬間である。
▼映画の監督は2年前に話題になった終戦と天皇を描いた「大陽」を撮ったアレクサンドル・ソクーロフだ。80歳くらいの老婆が、チェチェンの前線にいる孫を訪ねるために軍用列車に乗る場面から始まる。この美しい老婆の顔はどこかで見たことがあると思ってずっと考えていた。映画の最後の方になってあのロシアの反体制チェリスト、ロストロポーヴィッチの妻だったことを想い出した。夫は一昨年亡くなった。その映画で彼女の若い頃ソプラノ歌手としてオペラに出演しており、「カルメン」を演じている頃が映し出されるが、それはそれは妖艶であった。
▼話は脱線ばかりしている。ロシアでは一定程度兵役に就くと、家族を前線まで呼び寄せる権利があるのだという。それを利用してアレクサンドラは無理して軍用列車に乗り込んだのだ。一見ドキュメンタリーではないかと我が目を疑う。しかしカットバックなどが使われているし、俳優でなければ出来ない表情が兵士やチェチェンの人びとの顔に出ている。ようやくのことでチェチェンの前線基地にある駅に辿り着く。たまたま同じ列車に乗った兵士達は彼女に手を貸して助けたりする。しかしタラップがないので、抱き上げて貰ってようやくようやく降りることが出来る。そして基地までは装甲車に乗っていくのだが、ロシアの装甲車BTR80は狭くて乗り降りは穴にもぐり込むような要領で入らなければならない。わたしは高所恐怖症よりも、閉所恐怖症なので戦車や潜水艦などには絶対乗ることはできない。揺れられてついた所が前線基地だ。基地では大尉で地位は三番目くらいに出世しているので部下は20人くらいいる。兵士がアレクサンドラを「ここが貴女のホテルです」と案内してくれたのは一張りのテントでベッドが一つあるだけで、蒸し暑さはもろに伝わってくる。そして基地の上空にはハインドヘリが飛んでおり、ベトナム戦争を扱った「地獄の黙示録」のトップシーンの様だ。
▼久しぶりの再会でハグする二人、なぜ孫は祖母を指定したのだろう。祖母は夫は2年前に亡くなったが毎日が怒鳴ることの連続で気が休まる日がなかったという。そして孫がいうのには「おばちゃんはボクのおかあさんに辛く当たった」という。それぞれわだかまりはあるが、血の繋がりは親密さを復活するのに時間はかかならい。大尉の孫は「ぼくはここに来てから数えられないほど人に銃口を向けてきた。しかしそんなことはちっとも自慢にはならない」という。部下たちはどこの国の兵士も同じだが、銃の手入れに余念がない。最新式のAK74であるはずだが、スプリングやボルトが締まらず壊れてしまっているものもある。あるとき孫は「仕事だ」と言ってでかける、はっきりは言わないが装甲車数台でいくので、チェチェンの人たちの「掃討作戦」であろう。
▼祖母は「どこへ何しにいくの」と尋ねるが孫は無視して無言のままだ。基地の中にいても退屈で仕方ないので不自由な足で「バザールはないか?」と兵士に聞いて、孫の好きなタバコを買おうと思ってでかける。先日トルコに行って分かったが地方に行くと、店があるのはバザール(決まった日時に市場を開く露店の様な場所が多い)だけだ。そこに辿り着くまでに疲れてしまう。最初の店で何か買おうと思うが店員は「このロシア人目」という感じで睨めつけるだけで物を売ろうとしない。となりの婦人が開いている店でタバコを買う。とにかく疲れた様子なのでその婦人の家まで行ってひと眠りしてしまう。婦人はバザールまでとても美形の甥に送っていかせる。近道を歩くように指示されるが、アレクサンドラには果たしてそれが正しいかどうか不安になってしまう。ようやく基地に着くとロシア軍兵士と送っていった青年の目の間には明かな隔たりがある。
▼作戦に出て行っていた大尉は「おばあちゃんいったい無断でどこに行っていたの?」となじるが疲れ切った彼女はベッドに倒れ込むように眠ってしまう。翌日孫は今度は「5日間の任務だからもう帰った方が良いよ」と言い含められる。孫と何度も熱い抱擁を繰り返し、被っていたベレー帽を彼女に委ねる。駅に向かうと、バザールで出会った3人の婦人が見送りに来てくれていた。昨日買ったタバコのお金を払おうとすると、「いいから、いいから」と固辞する現地の婦人。ロシアとチェチェンは国レベルでは憎み合って戦争をしているが、人びとは戦争を憎み心から親愛の情を示そうとしていることが映像から伝わってくる。全編、実際の前線基地を使ってロケをしており、銃弾は一発も飛ばない。しかし大尉が祖母に言う「流れる血は美しい」という言葉に端的に狂気を現している様に思える。

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