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July 09, 2009

◇「レスラー」を見る

▼ミッキー・ローク主演の「ナイン・ハーフ」を見たのは、かれこれ24年ほど前のことになる。彼はこの時主演で最後のスワットの赤外線ドット式の標準機でハチの巣状態になって終わったような気がする。その後彼はずっと泣かず飛ばず状態だったようだ。そしてジャネット・ジャクソン同様に整形手術を何度も繰り替えし、今は元の顔の面影は残っていない。その彼が捨て身で演じたのがこの作品だ。
◇「レスラー」落ちぶれてもう引退しようかと考えている中年レスラーのランディ(ミッキー・ローク)。筆者は現実にもプロレスの中継や実演を見る事はない。しかし映画を見ると控え室で、対決するレスラーたちは実に和やかで、「きょうはどういう技を使って終わらせるか」念入りに話しあっている。おそらく日本の場合もそのように行われているのだろう。
▼とにかくランディは荒技を使うのでファンから絶大な人気がある。ある時は腕のメンディングテープ(というのか正式な名称は不明だ)その中にカミソリの刃を小さく切って仕込む。これで相手を傷つけるのかと思ったら、ちょっとした隙にそれを取り出して自分の額を切って、「流血場面」を過激に演出する。また、リングのコーナーに有刺鉄線を仕込んだり、タッカー(店舗などで使う大方ホチキスで針は普通のホチキスの倍以上ある)を使って相手の身体を傷つけるシーンなど見ているだけで卒倒しそうだ。だが観客はそれに沸く。
▼だがいつもカネの入るマッチがあるわけではない。普段はスーパーの店員として食材売り場で注文されたサラダを量り売りしてサービスに努めている。ところがある試合が終わった直後心筋梗塞で倒れてしまう。気がついた時は病院のベッドにいて、大手術が終わったばかりだ。医者に「リングに上れるか?」と聞くと「そんなことをしたら死ぬような物だ」ときつく注意される。こうなったらもう引退するしかないと腹をくくる。そしてバイト先には休日にも仕事をやらせてくれと頼み込む。
▼ランディの息抜きといえば近くのストリップバーに行って一杯飲むことだ。その中でも一番のお気に入りは、キャシディ(マリサ・トメイ)だ。店の外へ連れだそうとすると「客と店の外で会うことは禁じられている」とすげない返事が返ってくる。もうそうなると昔別れた妻との間に出来た一人娘だけだ。唯一の肉親だと住所を調べて会いにいくが、「見捨てたくせに自分が困ったら、面倒見てというのは勝手すぎる」と追い返される。困ってもう一度キャシディに相談すると、「着るものでも買ってあげたら」と相談に乗ってくれる。日曜日買い物に行こうかと思って街角に突っ立っていると、キャシディが「一度だけよ」と買い物につきあってくれ、若い女性向きの洋服を見立ててくれる。
▼それを持って再び一人娘の所に会いにいくと、一応それを気に入って受け取ってくれる。そして次の日曜日食事をする約束をしてくれる。しかし肝心な約束の日ランディは酔っぱらって、麻薬を使って若い女と遊んで約束をすっかり忘れてしまう。ストーリそのものは目新しい事は何もない。しかし主演の落ちぶれたミッキー演じるレスラーは彼自身のこの20余年間の生き様とオーバーラップしてくる。そしてまた時間をかけてプロレスラーの身体を作ったミッキーの熱意にもほだされる。

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