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August 23, 2009

◇67年間封印されていた「意思の勝利」を見る

▼映画を見に行った帰りに近くの神社で盆踊りをしていたので、その寄附金掲示板を見てきた。すると隣の一部上場企業の名前があった。「○王様入浴済○王バ×」と書いてあった。数年前までは近隣の町内会に自社敷地内で開く夏祭りの招待券が配られたものだ。それには屋台で交換可能な500円くらいの券が付いていたものだ。おそらくバ×だけになったのは、景気のなせる業なのだろうと思う。それにしても町内会のみなさんが「入浴剤」を「入浴済」と書いてあったのは可笑しかった。
◇「意思の勝利」レニ・リーフェンシュタール(プログラムの名前は英語読みだった)この映画は1934年9月4日から6日間、当時ドイツのニュルンベルグで開かれた国家社会主義ドイツ労働党(ナチ党)の大会をレニが記録した映画である。しかしその内容はナチスのプロパガンダで日本では67年間封印されたままだった。このたび渋谷シアターNで公開されることが決まったので土曜日朝一番の回に駆けつけた。開映30分前に会場に着いたが、残り10席で一番前の座席にようやく座ることができた。
▼まさにナチスの大会は一糸乱れぬ統一性をもった表現で描かれる。レニとはすでにご存知の方も多いと思うが、当時のドイツで美貌の女優として登場した。しかし途中から映画監督に転身してめきめきと頭角を現す。彼女はその美貌を最大限に利用してナチス幹部に接近する。そして昨日書いたオリンピックベルリン大会でその特異な記録手法、そして巧なナチスの宣伝をさりげなく取り入れるなどの手法で能力を認められる。
▼この経緯は「レニ」という映画で紹介されている。「レニ」は昔東中野ボックスで公開されて見た。ここで彼女はナチスに取り入るために、高官の部屋に出入りしている所を目撃されている。しかし映画で、インタビューアに尋ねられるとしらばくれる。これはビデオかDVDにもなっているので興味のある方はごらん頂きたい。
▼「意思の勝利」はニュルンベルグの大会に集まってくる市民や、飛行機でやって来るヒトラーの姿から映し出される。後はSSやSAの行進、シャベルを担いだ労働奉仕団の行進、また行進だ。そしてヒトラーの絶叫が続く。そしてパレードを市民達は嬉々とした表情で「ジーハイル」と歓迎する。ここではそろいの軍服と、独特の歩調が美しさを強調する。とくに黒いSSの軍服はかなり魅力的である。軍服と言えばNHKBS1で木曜日と金曜日の深夜、第一次大戦が始まる頃、フランスのお金持ちが世界中に、カメラマンを派遣してカラー写真を撮らせた記録を放映していた。面白いのは当時のフランスは軍服を派手にしようとして、ズボンを朱色にしてしまう。ところがそれが派手すぎてドイツ軍の格好の目標になって死者が続出するので、後に青に変更する話が出てくる。
▼この一糸乱れぬ行進というのは人間を魅了する魔力を持っている。結局第一次大戦で莫大な戦争の負債を負わされたドイツ国民は、強い指導者の出現を心待ちにしていて、ヒトラーはその時流に見事に乗ったとしか言えない。とくに10万人くらいはいるだろうという集会で整列する兵士の姿とその式典の祭壇に向かうヒトラーの姿は、スチール写真でもあまりにも有名だ。この場面でレニは正面に配置されたナチスの3本の巨大な旗の左から2本目の脇に自由に昇降できるカメラを据え付けた。これで会場を自由に俯瞰する映像を撮ることができたのだ。
▼「意思と勝利」は日本でも1942年に一回だけ上映されたまま封印されていた。映画は最初から最後までナチスのプロパガンダに終始一貫している。その「強い国」の描き方は、独裁国家のプロパガンダとして今も脈々と生き続けている。

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