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July 20, 2010

◇「ザ・コーブ」を見る。

▼4年前の7月19日の夕方に脳幹に出血して倒れたので、夏の暑さには気をつけている。一番には風通しの良い服を着ること。次は日陰を歩き帽子を被って水分の補給を怠らない。わたしはネクタイを締めなくても良い仕事をしているが、そういう服装を義務づけられているどうかお気をつけいただきた。
▼まず「パシフィック」だ。これは前作の「バンド・オブ・ブラザー(以下「BOB」と略す)」に比べてかなり情緒的に作られている。つまり出征する兵士たちの家庭環境まで立ち入っている。「BOB」の場合全員集められて地獄の訓練から始まっているのは、「硫黄島の砂」、「フルメタル・ジャケット」に共通している。なぜ家庭環境まで立ち入ったかというと、いまこの時点で日本を完全な悪として描くことは得策ではない、と制作者のトム・ハンクスなどは考えたのだろう。そしてやむを得ず世界制覇を狙う日本をやっつけに行くという構造が正当化される。そして大けがを装って倒れて、米兵が近寄って来たら手榴弾を爆発させて巻き添えにして「天皇陛下万歳」と叫ばせて道連れにする。かと思うと生き残った兵士が一人で「撃てよ」と挑発するが、ヤクザのケンカではないのでこういうことはあり得ない。
▼そして戦闘開始に当たって米兵には「日付の入った日記と手紙は廃棄せよ」と命令が飛び交う。しかし死亡した日本兵の手荷物には家族の写真や、人形、手紙が出て来て憐れみを誘う。手強い日本軍を相手に、多くの犠牲を払っていかにガダルカナルで戦ったかというのが1の上の話だった。しかし2話以降は見ようという気持ちは失せた。
◇「ザ・コーブ」これは「湾」という意味である。映画の制作者はかつて「わんぱく・フリッパー」の調教師として活躍し、イルカが登場する場面は彼の自宅のプールで撮影したという。ところが彼はあるとき突然、この知能ある海獣を飼育するというのは間違っているのではないかと思う。そして世界各地の「シーワールド」を巡ってイルカの解放をする。考えて見ればイルカだって人間の前で芸を披露するのは楽しい筈がない。だから裏では食料のエサにストレス対策の胃薬を大量に飲まされている。
▼そして彼は日本の太地町(余談だが女優の太地喜和子はこの出身だ)でイルカのの捕獲をしていることに気づき何年も通いづめている。しかし彼は地元警察にマークされていて、来ると必ず尾行の車が後を追う。そのため彼はパーカーとサングラスで、老人を装って行動する。彼らの主張によれば太地町ではイルカを捕獲するとき、シーワールド(この場合千葉の鴨川にある施設の固有名詞ではなく、イルカショーを見せる施設)の目利きをよんで芸を仕込むのに適当なイルカを選別して売る。さらに世界中のシーワールドに、ここで捕獲したバンドウイルカを1頭20万ドルくらいで売っているとする。
▼彼らは漁師にカネを払うから売ったり、殺害するのを止めてくれないかと頼んだことがあるが、「これは必要な行為である」と断られたとする。そこで彼らはアメリカで盗撮するための実験を行い、海中で撮影するカメラ、岩を装ったカメラをハリウッドの会社に依頼して大量に作らせる。そして50個余りの荷物を持ちこむ。見ている方は、これだけで莫大なカネを使っているだろうなと思う。そして夜陰に紛れてカメラを設置して撮影に成功する。撮影ポイントの設定や湾に近づくと、一見ヤクザのように見える漁師たちに口汚い暴言を浴びせられる。
▼そしてイルカの追い込み漁が始まり、湾には小舟に乗った漁師達の銛でイルカたちの血しぶきで埋まる。そして漁師たちを擁護する立場の地元農水相の係員だったか研究者、国際捕鯨会議で捕鯨を推進する立場の高級官僚が、どちらかと言うと「悪の代表」のように描かれる。わたしの感想で言えば、高度の知能を持っているイルカの殺害に反対するならば、アメリカがイラクやアフガンで行っている最も高度な知能を持つ人間に対する殺害行為(戦争)に彼らはなぜ命を賭けて阻止しないのだろうか。
▼さらに漁師たちがなぜ大量のイルカを殺害するのか取材説明が一切ないことだ。「ワイルド・バンチ」ではないからおもしろがってイルカを殺害している筈はない。おそらく漁師達が苦労してせっかく獲った魚を食べられてしまうので生活が成り立たないというのかも知れない。そこを堂々と主張して画面で語ったら良いのではと思う。さらに取材拒否をするだけでなく、逆のPR映画を作ればもっとよいのではないだろうか、と思った。西洋人が牛肉を何の疑問もなく食べて、魚を食べて生きている東洋人を残酷と決めつけ、イルカに同情した本末転倒な作品に見える。

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