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August 25, 2010

◇「キャタピラー」(若松孝二監督)を見る

▼土日にかけてみたNHKの戦争関連番組はハイビジョンの「市民達の戦争」で1)熊本県に墜落したB29と、その飛行士を殺害した話。2)「漁民は戦争に消えた」焼津のマグロ漁船が大量に雇われ軍部の情報収集をしていたという話。これを見てわたしはビキニで被爆したマグロはえ縄漁船第5福竜丸についてアメリカは当初から、スパイ船の疑いを持っていたという疑惑があった事が分かってきた。3)「ヤマの戦争筑豊炭田の強いられた増産」これは石油に変わって鉄を溶かす燃料は石炭が必要になったため、女性は炭鉱に入れなかったにもかかわらず法律を変えて採炭に従事させた話だ。4)大逆事件、これは当時の桂(勤王の志士、桂小五郎と遠戚にあたる)内閣が天皇の地位を絶対化し、逆らうものは徹底的に弾圧する姿勢を国民に知らせるために行った冤罪だと思う。和歌山の新宮にはその犠牲者が6人いる。いま現在再審は国によって拒否されているが、今は市をあげて復権のための活動や顕彰をしている。しかし被疑者の家族は三代くらいまで地元の人に白い目で見られて、軍隊でも差別され上進できず、付近の街に住むことすらできなかった。
◇「キャタピラー」わたしが上京した当時国電の中や上野駅周辺には白衣と松葉杖をつき、軍歌をアコーデオンで弾き語りする人たちが大勢いた。今にして考えると戦後20年もしてそういう人がいることすらおかしいし、詐欺ではなかったかと思う。先日のNHKで双葉百合子の歌う「岸壁の母」を見るにつけ、戦争責任を蔑ろにした、国民層懺悔的な歌を唄うのだろうと思う。しかしお年よりはそういう傷痍軍人をみるとたちまち「寄付」に応じていた。
▼「週刊金曜日」20日号で本多勝一が「残酷なのは戦争か?」というテーマで書いている。「戦争に反対する」、「戦争が悪の根源である」、「二度と戦争にならないように」という言葉がこの時期になると氾濫する。しかし戦争には人格があるわけではない。いろいろ屁理屈をつけて資源確保、領土確保をスローガンにして戦争を始める。つまり侵略が先にあるからそれを防ごうとして侵略に反対する戦争が起こる。抵抗しなければスンナリ「植民地」に去れてしまう。日中戦争もベトナム戦争もそうだった。6月23日朝日夕刊に投稿した語り部が沖縄で日本軍に殴られて失明し、祖母は殺されたらしい。だが彼は「日本軍の残酷さを訴えたいのではなく、戦争が残酷なのだ」と語らせ、「ケンカ両成敗的な侵略者の発想」ではないかと指摘している。わたしも同感である。32年ほど前に近くの川で灯ろう流しがあったので行ってみたが、演説するのは自民党の国会議員で時代錯誤の演説をするし、灯ろうには「戦争反対」と訳の分からないスローガンが書かれているので二度と行かない。
▼さて映画の本論だ。福島県の山村では出征兵士が「国防婦人会」のタスキをかけた婦人と村人に万歳三唱で戦地へ送られていく。同時に一台の高級乗用車がすれ違う。その家に着いたが降りたのは手足をもがれてダルマ状態で帰国した久蔵(大西信満)だ。わたしはその姿を見て「ジョニーは戦場に行った」を思いだした。妻のシゲ子(寺島しのぶ)は夫の変わり果てた姿を見て、「あんなのは夫ではない」と泣き叫び驚愕の表情でみつめる。一度は首を絞めて殺そうと考えるが、思いとどまる。
▼一転して中国の村の戦闘シーンに切り替わる。彼(夫)はそこで中国の女性を暴行し殺害していたのだ。絞め殺すことができなかった夫は村人はこの生ける死者を「生ける軍神」と崇めたてる。野良仕事をするとき寺島は手足のない夫を幼子を入れる竹で編んだ大きなつづら(カゴ)に入れてリヤカーで連れ出す。すれ違う村人たちは軍服と勲章を付けた彼を見ると「軍神様」、「軍神様」と最敬礼をして崇めてやまない。そしてある時は「軍神様にあげて下さい」と白米や当時は貴重であった産みたての卵を寺島に託す。そして夫が外出を嫌がるときは胸の夫が授与された3つの勲章を胸に付けて出征兵士を見送る。
▼そして帰宅すると壁には天皇皇后の肖像写真とともに軍神の活躍をたたえる新聞と3つ勲章が飾られている。夫は煎餅蒲団に寝かされたまま、そこに自分の「国のために尽くしてきた」という存在価値を確かめるかのうようにじっと勲章と武勲を讃える新聞記事を確かめるかのようにじっと魅入っている。だが妻の手を借りなければ食事をすることも排泄も何もできない。このダルマ同然の状態でしか存在する価値のない夫は「飯を喰い、排泄し、ただ唯一性行為だけが生きがいになっている事が肉の塊となっている。妻にとっては何かにつけて性行為だけを要求するこの夫のどこが 「軍神」 なのかという気持ちになる。
▼空襲の実写場面と呼応して、村の鎮守の森では主婦達が集まり、バケツリレーの消火訓練や竹やりを使った刺突訓練に励む。この村人の期待に応え、彼らや出征兵士の士気を高めるために寺島は、自分がなすべきことは、この名誉ある 『生き神さま』 をお世話することにほかならない」と考えて割り切るようにつとめる。しかしそれも「妻としてではなく、日本国民の義務として」。夫はあるとき中国戦線で中国の婦人を暴行殺害したことがフラッシュバックして妻に対して性欲を失う。妻は出征前夫に「子どもが産めない」と繰り返し折檻された事を思い出して抵抗できない夫を殴りつける。だがそうしているうちに「終戦の詔勅(監督は分かりやすい言葉で字幕化している)が流れてくると「軍神様」として夫の存在する必要はなくなってくる。
▼金曜日の仕事心配だったので「短パンTシャツで良いか?」とメールで尋ねたら、「ノー、長ズボンに襟付きのシャツで来るように」と言う返事があった。一日こういう格好は疲れる。持参して駅で着替えよう。それとも若い女性のようにレギンスかトレンカをつけて短パンをはき、さらにTシャツには紙で衿を付ける方法が考えられる。

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