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March 01, 2012

◇「ニーチェの馬」を見る(その2)

229
(2月29日の数値)
▼昨日のインド山岳鉄道が放映された直後に「ナマステー」という携帯メールが届いたので驚いた。深夜にも同じ放送があった。わたしが1月に乗車したのは、あの最後の大ループからダージリン駅の方角だ。
▼NHKでは毎夕午後6時50分から関東各地の放射能測定結果が放送される。わたしはその画面を出来る限り撮影しているが、月曜日から「通常の値」というコメントがなくなってしまった。ずっと見ていると2月は北風の影響もあってかなり数値が高いのだ。だがNHKは一貫して「通常の値」と強弁してきた。不思議なのは福島の隣県である栃木は高いはずなのに低く発表されている。さらに栃木は「機器の点検」と称して数値が発表されない事が時々ある。ネットでは那須塩原にホットスポットがあると指摘している人がいる。
▼今朝の朝日では「食品の放射線汚染の数値が引き下げられた事は評価できる。しかしそれをすり抜けてくる食品の検査をどうするかが問題である」と指摘している。まさにその通りである。
「越前ガニ」をわいろとして受け取る細野豪志原発大臣。
◇「ニーチェの馬」(その2)馬を間近でご覧になった人はご存知だと思うが、馬の目は澄んでいてとても美しい。今まで人間を信じて育って来たのが、人間の都合でいきなり射殺というのは酷すぎると思う。
▼さて映画で親子は目を覚ますと気付け薬代わりに焼酎(翻訳では、実際はパリンカ)をショットグラスで父親は2杯、娘は1杯グッと一気に飲む。寒さが厳しいので、そうしないとやっていけないのだろう。そして娘はベッドから起き上がると重ね着をして、風が吹き込む木製のドアを開けて大きなバケツを持って、覚悟を決めて表にでる。そう生きていくのに必要な水を家から50mほどの距離にある井戸にくみ上げるためだ。
▼釣瓶を引っ張り上げる。そうそう中村雀右衛門が死んでしまった。彼の出演を見たのは歌舞伎座でかれこれ7、8年前になるだろうか。「籠釣瓶花街酔醒」を見たのが最後だった。素顔や元巨人軍の投手で監督だった堀内を老けさせたゴツイ顔をしていたが、女形になるとこれがとても美しくなる。それに踊りもとても上手かった。釣瓶の柄杓で2度引っ張り上げると家のバケツが一杯になる。それを持ち上げて再び家に戻って炊事をはじめる。父親を着替えさせ、竈に火を入れ、湯を沸かしてジャガイモを茹でる。そして「食事が出来た」と父に言っていつものように黙って食べる。
▼あるとき近隣に住む男が「パリンカを分けてくれ」とやってくる。隣人は勝手に町は風で崩壊したとか神の消滅の「予言」をしゃべって帰って行く。死や世界の破滅を告げる雰囲気は薄気味悪い。それで一杯ひっかけてパリンカ一瓶分を詰めた代金を金貨で支払って出ていく。そして、やがて井戸の水が涸れ、ジャガイモを茹でることができなくなると、父は生でジャガイモを食おうとする。が歯が立たないので諦め、家を捨てる決心をする馬はもう息も絶え絶えなので放置し、娘が家財道具とジャガイモを積んだ重い荷車を引っ張って家を後にする。だんだん強く吹きすさぶようになる風と、くりかえされる音楽と風の音とが微妙に同じ根源から出ていることにも気づくだろう。世界の終末を暗示するようなと混ざって最後のシーンでは、風の音に教会の鐘の音がかすかにだぶるように聴こえてくる。だが家から遠ざかって丘を越えたと見えた娘が引く荷車は、再び何もない家に戻ってくる。もう悪い循環をくり返すのが人生であるかのようである。
▼この部分を哲学者は「ニーチェの「永劫回帰」(永遠の循環)を想起させる」というのだが…。(渋谷イメージフォーラムで上映中)

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