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March 07, 2012

◇「イエロー・ケーキ」を見る。

▼朝日6日の夕刊に作家池澤夏樹の「終わりと始まり」という月一回のコラムが掲載された。今月は「あの日から1年/不安を抱いて生きる」がテーマだった。その中でしかし電力会社も産業会もしぶとい。利権の力は強いし、彼らには我々とは違う倫理観があるらしい。水俣病のケースを考えてみれば先は長いのかもしれない」と書いている。同じことを「愛川欣也パックイン・ジャーナル」に出席した京都大学助教の小出裕章さんも「脱原発の見通しはかなり暗い」と話していたことと一致する。デモがあっても何があっても圧倒的多くの人は自宅でタコ壺に籠もるか、TVを見ているだけか、ネットを見て「沈静化」するのを黙って見ている。誰かのかけ声だけで原発は、絶対になくならない。これを読んでいるあなたが何らかの行動を起こさない限り。池澤は最後に「キューバ危機」を引き合いにだして、「生きるということは一定量の不安が含まれる、ということを我々は覚った」と締めくくる。わたしは池澤と同年なので、キューバ危機の夜は、明日の朝は生きて迎える事ができるだろうと思って寝た事を昨日の様に思い出す事が出来る。
◇「イエロー・ケーキ」巨大なボタ山を登るトラクターが写る。これはドイツが制作した映画だ。ボタ山は旧東ドイツ(現ドイツ南部)で発掘されたウラン鉱山の埋め戻し作業である。映画を見て分かったのだが、東ドイツのウランは旧ソ連の核開発の材料となっていた。それでメルケルが、福島原発事故後に、いち早く「脱原発宣言」したのはこの重しを取り払いたかったのだと思う。つまりウラン鉱石を採掘して篩いにかけて純度の高いウランを取り出すと、残り99%の土石はまったく不要になる。しかしその中に微量のウランを含有した砂礫が含まれている。これをイエロー・ケーキというのだ。それは除去できないまま山積みにされていた。だが環境への影響が懸念されて、埋め戻しが行われつつある。しかし粉塵はどうしても処理できず、雨とともに流だして大きな湖を作ってしまう。
▼いまウラン鉱石を、最も大量に採掘できる国は南アメリカのナミビアである。原住民だった人は採掘場ができてからもの凄く生活水準が上がった。といっても採掘場で働けるのはこの国のごく一部のエリート達だけである。さらに国の雇用制度ではどんな危険な現場でも女性と男性を同数採用しなければならないという規制がある。だから巨大なトラックも、危険な採掘最前線にも女性はいる。昔に比べれば夢のような生活が待っている。豊かな食事、それにネイルサロンやエステにだって行ける。だが放射能が危険だという学習は何一つ行われていない。こんな事をあと10年も続けたいたらどんな健康被害が出てくるのだろうか?それにドイツと同じ鉱滓の処理も行われていないので、今後どうなるのか誰にも分からない。政府は経済成長だけ続ければ何でも良いと考えているのだろう。
▼次にウランの産出が多いのはオーストラリアである。ナミビアもオーストラリアも親会社はイギリスに本社がある。上空からの空撮は拒否されるので、昔密かに撮った画像が出てくるが、一見すると琵琶湖のような広さである。取材許可がでる所まで入っていくが、固めて地中に埋めるとしているが、先の見通しは真っ暗である。さらにこの国ではウランの産出量は減り続けている。対策として、今の採掘場は先住民を騙して取り上げたものである。しかし反対運動の中心になっている人は今ではそれを深く後悔している。
▼そして若い高校生は誰に頼まれたでもなく、ガイガーカウンターを持って自主的に濃度の調査をして、土を大学の研究者に提供しようとしている。そんな危ない事をして大丈夫かと聞くと、「大学の先生もやっているから、おそらく大丈夫」と答える。彼女たちは採掘し終えた企業が町を出て行ってしまったので、もう一度ウランを発見して町を復興させようとするのだという。
▼一見東京都23区がすっぽり入ってしまう、原生林の巨大な土地を売ってくれと原住民に迫るイギリス企業。世界一の大金持ちになることに興味はない。環境を守るために一切売る気はないと売却の書類にサインする事を拒否している。ウランは原発や核兵器に必要不可欠である。だが爆発した結果もさることながら、最初の採掘現場で、ウランを含んだ粉塵は大きな健康被害が広がっている。さらに使い終わって燃料棒はまたこれ大きな荷物となっている。イギリスの会社の社長は「わが社が発掘から処理まで一貫した作業を安全に進めている」と豪語する。しかし最初のドイツの巨大なウランを含んだボタ山が迫ってくる。人間はなんと愚かなモノに手を出してしまったのだろう。渋谷アップリンクシアターで上映中。

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