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June 21, 2015

NHK「沖縄戦全記録」を見る(補足説明(3)

 更に問題だったのは、台湾沖航空戦で、日本軍は300機以上の航空機と大量のパイロットを失い、
台湾・南西諸島・フィリピン方面の航空戦力が枯渇した事です。
 この戦力不足が、後に、神風特別攻撃隊が生み出される背景となります。

 戦果誤認は、大本営の「粉飾」もありましたが、一番の原因は、搭乗員の練度低下でした。
 本来なら、経験を積んだ中隊長・大隊長機が全体を見ているものですが、そのような搭乗員は少なくなっており、爆弾一発の命中を5人が目撃すれば、それぞれが報告し、報告を集計すると、「5発命中」となってしまいます。

 大本営は、第9師団を引き抜いた事に責任を取らず、航空作戦も、特攻作戦以外は遂行できない状態で、第32軍に作戦を命じます。まさに、「時間稼ぎ」でした。

 喜屋武まで後退したことで、第32軍は更に1ヵ月間、抵抗を続けられました。
貴重な戦力を取り上げられ、孤立無援に陥りながらも、第32軍は「本土防衛の時間稼ぎ」という役割は充分に果たしたと言えるでしょう。

 沖縄戦の最大の特徴は、陸海空全ての面に於いて、住民も含めた「特攻」が前提となったことです。
 神風特別攻撃隊・義烈空挺隊・戦艦大和・第32軍・住民、全て、生還は有り得ない前提でした。
 対馬丸の撃沈も、未成年者が戦闘に動員されたことも、住民の集団自死も、悲惨で怖いことなのは当然ですが、私が一番怖いと思うのは、住民も含めた、そこに存在する命を全て「殺す」ことを前提としたマネジメントを、平然と遂行した
日本の官僚システムです。「二段底の怖さ」とでも形容できるでしょうか。

 因みに、台湾沖航空戦の戦果誤認による計画変更に振り回されたのは、フィリピンの第14方面軍(長・山下奉文大将)も同じです。ルソン決戦を前提として計画や陣地構築を進めていましたが、レイテ決戦を命じられ、全て、やり直しを余儀なくされました。連合軍に比べて少ないリソースを更に無駄遣いさせられたのです。第32軍が、第9師団の抽出で、途中まで進めていた計画や陣地構築を変更させられたのと同じ構図です。
「エリート」の集まりであった筈の参謀本部作戦部(広い意味では、大本営)が、どうして、現地の意見も聞かずに、そのようなマネジメント(情報誤認・リソースの無駄遣い・命の使い捨て)を行ったのか。又、行えたのか。3.11にも通じる問いかけだと思います。

 最後に、私が持っている沖縄戦関係の書籍のご紹介です。

「第二次世界大戦史・日本本土への道」(タイムライフブックス)「沖縄県民斯ク戦ヘリ~大田實海軍中将一家の昭和史~」(田村洋三/光人社NF文庫)
「沖縄 日米最後の戦闘」(米国陸軍省・編 外間正四郎・訳/光人社NF文庫)
 沖縄戦を俯瞰した映画としては「激動の昭和史 沖縄決戦」(東宝・1971年/監督:岡本喜八 脚本:新藤兼人/149分)が有ります。私はDVDを持っていますが、沖縄戦を描いた映画で、この作品の右に出るものはありません。

 長くなって申し訳ありませんでした。ここでは、NHKの番組に盛り込まれていなかった視点で、幾つかをピックアップして書きました。機会が有れば、「沖縄決戦」は是非、ご覧になって下さい。
春橋哲史

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