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March 19, 2017

◇「わたしは、ダニエル・ブレイク」を見る。

▼人はなぜプライドを持って生きることができるか?誰からも哀れみや施しも受けず、自立して生きているという自信を持つことが第一だと思う。ケン・ローチは市場経済主義が横行するイギリスにあって、心臓病をもって求職活動をする一人の男性ダニエル・ブレイクにスポットを当ててこの問題を訴える。イギリスでは「緊縮j財政」のため、生活弱者にそのしわ寄せが押しつけられている。ダニエルは妻とは死別し、集合住宅の一室に住み、日本でいう職安に通っている。しかし仕事を探すには、履歴書を書いたり、ネットを通じて様々な申し込みをしなければならない。しかし彼が持っているのは小さな携帯一台でしかない。しかしどうしたら良いのか職安に手続きを聞くために電話をしても延々とまたされるだけだ。そして交渉経過はすえて録音され、態度が悪いと査定に影響する。
▼ようやく職安の電話が繋がるとオンラインで申し込めという。「ネットやPCなどない」というと「職安に来い、履歴書の書き方プログラムがあるからそれに出るよう」に促される。要するに求職をしたという実績がないと給付金はもらえないシステムなのだ。ようやく受講は終わるが、長いあいだ大工一筋だったダニエルにはPCなど扱えない。つまり弱者にハードルを高くして、そこで申請できないようにふるい落とすのだ。如何にも官僚が考えそうな手口だ。手書きの履歴書を書いて飛び込みで「仕事ないか?」と営業をして歩く。仕事は決まりそうになると、「医師から仕事を禁止されている」と告白するので、相手からは「やる気があるのか」と罵られる。
▼そんなある日近所にロンドン二人の子どもを連れたシングル・マザーのケイディが引っ越して来る。彼女は大学生だが二人の子どもを抱えて収入がほとんどないので、フードバンクの世話になっている。そのことがまた学校に行っている娘のいじめの対象になる。ストーリーをあまり詳しくは書くまい。ぜひ映画館に足を運んで頂きたい。日本の有名プロレタリア映画監督らしい人たちも勲章を貰うととたんに方針を娯楽だけに変えたり、独りよがりの作品を作るようになる。おそらくプロデューサーが、「こういう映画を作らないと資金が集まらない」とでも言うのだろう。
▼その点ケン・ローチがぶれずに作品を作り続けている。本当は前作で引退の筈だったが、あまりにもイギリスの「緊縮財政」が徹底して弱者をいじめ続けているのに、黙っていられなかったのだろう。ダニエルは役所が彼を数字としてしか見ないので、職安の壁に映画のタイトルの文字を黒のスプレー缶で書き続ける。それを通りがかりの人々は拍手で「同感」の意思を示すのだ。有楽町ヒューマントラスト他で上映中。

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