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May 01, 2018

◇ロシア映画「ラブレス」を見る。

「父、帰る」「裁かれるは善人のみ」などで世界的に高く評価されたロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督作品。T日本のTVドラマで「新参者」という作品があって、何度も見ているが、見るたびに新しい発見がある。三浦友和の長男(向井理)がグレレいるのは、あるとき母親(原田美枝子)が「あの子は予定外の出産だったのよ」と電話で話しているのを偶然聴いてしまったからだ。この映画で一流企業で働く夫と、美容院を経営する妻とその子どもが主人公である。そして夫は会社でのメンツだけを気にして働いている。妻にも愛人がおり、愛人と二人でいることだけが楽しみのようだ。離婚したら、どちらがむすこを引き取るかで、押し付け合いになっている。その夫婦げんかの様子をしり、行き場を失ってしまった息子は悲痛な鳴き声を上げる。
▼学校でも疎外された存在に見える。山路を歩いて行き来する。唯一の楽しみは河のほとりの枝に長い紐のついたテープを高くほおって木の枝に引っかけることだ。離婚に先立ち郊外にある高級マンションを売り払おうとしており、下見客が部屋を見にやってくる。妻は内覧の客に対して「離婚を控えているので、売却したい」とあっけらかんとしている。客に挨拶を促すが長男は部屋に閉じこもってでて来ようとはしない。ある日息子が学校を出たが家に帰っていないことに気付いた妻は狼狽する。そして夫の職場に「何とかして」と電話をする。
▼映画の最初は陰謀論がロシアに蔓延しており、もうすぐ地球は破滅するという噂で持ちきり。政府はその噂を打ち消すのに躍起となっている。映画の空気はそれをバックにして未来に希望が持てない、大人は現実の世界のセックスにしか希望を持てない退廃的な空気が漂う。息子が行方不明になって警察に届け出を出すが、一通りの調査をするだけで、2,3日で帰って来ますとまったくやる気がない。それよりも民間の捜査機関のほうが組織的にしっかりして、すぐ行動してくれますよという始末である。民間団体の捜索は組織的で軍隊のようにきびきびしてやることが早い。ようやく息子の友人を突き留め、話を聞くと墓地にある廃墟の地下室にいるのではないかという。
▼しかし行って見るともぬけの空である。あるとき病院から死体が運び込まれたと連絡があり、腐乱死体は別人のものだった。捜索チームは河の中も調べようとするが、指揮者は「死体の捜索は警察の役目だ」と引き上げる。街のあちこちには行方不明少年の顔写真が入った少年のポスター」が貼られている。ラストシーンは少年が投げて木に引っかかったままのリボンが舞う。突如失踪した息子の行方を追う格好はしてみせるが、所詮自分達の目先の利益しか考えない、身勝手な両親を冷ややかな映像で描く。有楽町ヒューマントラストで。

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