« NHKBSでナオミ・クラインの「グリーン、ニューディール」政策を見る。 | Main | 盆の間に見たTVドキュメンタリー等の感想。 »

August 13, 2020

国はなぜ「黒い雨」判決を控訴したか?

ご存じのとおり、7月29日広島地方裁判所民事第2部(高島義行裁判長)は、原爆投下後に降った「黒い雨」に遭っていながらその地点が国が政令で定めた第一種健康診断特例地域の外であったためこれまで被爆者援護の対象から外されていた原告全員に被爆者健康手帳を交付することを広島市と広島県に命じる判決を出しました。

昨日読者の皆さんにツイッターで厚労省に「黒い雨判決で控訴するな」の署名を出すようお願いしました。実はわたしの所にはメーリングリストでかなり長いメールをいただいています。ツイッターは文字制限がありますので、あのような形になりました。要旨は以下にあります。要するに国の原子力政策にかかわってくることなのです。

現在、控訴を断念するかしないかをめぐって、広島市・広島県と国(厚労省)との間で協議が続いています。
「黒い雨」裁判の被告は、被爆者健康手帳交付業務を行う広島市と広島県ですが、広島市・広島県は実はこれまで原爆被害者救済の立場から第一種健康診断特例地域の拡大を国に求めてきました。
「控訴したくない」というのが、広島市・広島県の意思であろうと思われます。
しかし、被爆者健康手帳交付が認められる第一種健康診断特例地域は国の政令で決まっているため、広島市・広島県は国と協議を続けています。
「中国新聞」の次の記事をご参照ください。
 ▽「黒い雨」訴訟、厚労省が控訴検討 「新たな知見ない」 広島市・県は救済要望
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=670505&comment_sub_id=0&category_id=256
 国(厚労省)は、「黒い雨」判決を受け入れたくないでしょう。なぜなら、「黒い雨」被害を認めるということは、いわゆる「低線量被曝(=100ミリシーベルト以下の被曝)」とりわけ「低線量内部被曝」の影響を認めるということになるからです。
 「低線量被曝」・「低線量内部被曝」の影響を認めれば、原発事故による被害とその補償の範囲も、大幅に拡大しなければなりません。
 原発事故による「帰還困難区域」も「居住制限区域」も、「食品中の放射性物質に関する基準値」も厳しく見直さなければなりません。
 さらには、福島原発からのトリチウム汚染水放出の方針も、膨大な放射性物質放出を伴う六ケ所村再処理工場稼働計画も見直さなければならなくなります。つまり、軍事用・商業用を問わず核開発が必要としてきた「放射線安全神話」が崩壊してしまいます。
 国(厚労省)は、原発や核(→そこから利益を得る国際核利益共同体)を守るために、目の前にある「低線量被曝」・「低線量内部被曝」の影響を否認するのか。
 75年間放射線被曝被害に苦しみながら救済を受けられなかった人たちをこの期に及んでまだ切り捨て、同様に、これからもあらゆる放射線被曝の被害者を切り捨てようとようとするのか。

|

« NHKBSでナオミ・クラインの「グリーン、ニューディール」政策を見る。 | Main | 盆の間に見たTVドキュメンタリー等の感想。 »